<前回からの続き>
1980年代までは、SM雑誌や洋モノ雑誌などに掲載されたイラストによる顔面騎乗シーンを漁るぐらいが関の山でした。
その後、90年代に入ると日本国内でSM系のカラー写真集が発刊されるようになり、「スレイブ通信」、「ミストレス」、「家畜人」といった女王様専門誌も増えてきます。
それまで日本のSM誌の構成といえば、カラー写真は巻頭グラビアのわずか10数ページ、残りは文字情報。さらにはS男・M女のコンテンツが8割以上を占めていたので、S女・M男のプレイの中でもさらにマイナーな顔面騎乗の写真なんて、誌面に掲載される可能性はまずもってゼロでした。
それゆえに、女王様専門誌が発刊されるようになったのは、長足の進歩ともいえる状況だったのです。
しかしながら、それで顔面騎乗シーンが豊富に出回るようになったかといえば、残念ながらそうではなかった。S女コンテンツだから顔面騎乗らしきシーンがあるにはあるのですが、割合としてはごくわずか。
SMプレイにおいて、顔面騎乗は女王様の責めに耐えたご褒美という位置づけ。ゆえに鞭や縄やローソクやその他モロモロの見るも無残な一連のSMシーンが続いた後、最後にチョロっとだけ女王様が奴隷の顔に座るシーンが申し訳程度に添えられる、といった有様。
しかもその多くは、顔に座る直前を表すかのようにお尻と顔が離れていたり、奴隷の哀れな表情を見せたいためなのか、首や額など中途半端な位置に座っていたりとエセ顔騎シーンばかり。女王様が奴隷の顔全体を覆うようにバシーッと座り込んだ写真にはめったにお目にかかれませんでした。
私にしてみれば、寂しいフトコロから大枚はたいて女王様専門誌買ったのに、毎回毎回そんなエセ顔騎シーンばかり見せられた日には怒り心頭ーっ!
「コラーッ、女王様っ! なんで奴隷の顔にキッチリと座らんのかー? ちゃんと仕事しろいっ、 バッキャロー! カネ返せーっ、チキショーッ! 責任者出てこーい、コンニャロメーーッ! !(以下省略)」
と、まあ、それはそれは大憤慨していたのであります。いつもひとりで・・・。
また、ごくまれにお尻で顔を塞いでいるシーンが有りはしたものの、ラバーとかレザーのボンデージパンツみたいなのを女王様が履いてたりする。それを見ると「きっとひんやりとした冷たーいお尻が顔に当たっているんだろうなー」と思われて全く共感できない。
実はこの時代、数多くの女王様専門誌が発刊されていたのですが、顔面騎乗マニアたる私にとってはどれもこれも満足できるものではなかった。結局、自分はマゾではないことを改めて実感するばかり。
顔面騎乗グラビアで唯一私の琴線に触れたのが、1980年代半ば頃に「月刊シークレット」という雑誌に掲載された「素人モデル 麻美子ちゃん女王様 “顔に乗るの大好き”」というグラビアページ。
麻美子さんというSっ気のある素人女性が、これまた素人モデルのオジサンの顔にバシーッバシーッと座った写真が何点も掲載されていたんです。
いずれも高い技術で撮影されたとは言い難い、稚拙なモノクロ写真ばかりでしたが、女王様専門誌で良く見る女王様と奴隷のセッションのような作りモノっぽいものではなく、臨場感あふれるシーンばかり。
この時私は写真による(つまりホンモノの)生々しい顔面騎乗シーンを初めて見たのでした。
「だからどうしたん?」と思われるかもしれませんが、それまでイラストによる顔面騎乗シーンしか見たことが無かった私にとって、その写真は現実の女性が現実の男性の顔にバッチリ座った生々しい瞬間を切り取ったもの。それまで私がいくら探し求めても見つけられなかったシーンだったのです。
女性モデルの麻美子さんは、スレイブ写真集とかでよく見かけるボンデージ姿ではなく、ごく普通のカジュアルなコスチューム。自分でスカートをめくり上げ、白いパンティでオジサンの顔にバッチリと座り込んだ様子をたっぷりと見せてくれます。
その当時まだ顔面騎乗経験がなかった私にとって、とにかくそのオジサンの羨ましかったこと・・・。「ううっ。このオジサンになりたいーっ」と心底願ったのでした。
<次回へ続く>